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お待たせしました、カウントダウン3日前SSです!
「次に僕がハイッて言うと、完全に目が覚め、あなたはいつものあなたに戻りますよ……ハイッ」
「…………」
青羽明日香は、閉じていた目を開いた。
「また……やったのね」
目の前にいる神楽一紗をにらむ。
明日香は、制服の上着をはだけブラジャーを上にずらして、乳房を完全に露出させられていた。
「やったというか、やってもらったというか」
悪びれもせず一紗は笑い、明日香は顔から火が出る思いで、一紗に背を向け服を直した。
記憶がしっかり残っている。ついさっきまで、明日香はおっぱいを出すのが制服の正しい着方と思いこんで、なぜ学校のみんなが誰も彼もおっぱいを隠すという校則違反を平気でやっているのか、一紗に愚痴っていたのである。
もちろん、一紗も校則違反をしていたので、明日香自身がその服の前をはだけさせた。その上で胸と胸を合わせ、乳首同士をこすり合わせながら、額がくっつくほどの至近距離で会話を続けた。きちんと人と向き合って話すのだからそうするべきだと、明日香の方から一紗に説教しつつ。
催眠が解かれた今、本来の価値観で自分の行動を思い返すと、明日香は目の前の一紗の首を絞めたくて仕方がなくなった。このところ思いもよらない自分の一面を新しく発見してばかりである。それもすべて一紗のせい。
「どこまで、人を馬鹿にすれば気がすむの」
恨みがましく明日香は言った。明日香は一紗に催眠術をかけられ、何度も何度もこんな風にもてあそばれている。昔からの知り合いで、憎からず思っていた相手でもあったが、こんな行為を受け入れるのは明日香のプライドが許さなかった。
しかし、怒る声に力がないのは、まだじんじんと体が甘くしびれているからである。
「正しい作法」により乳首を擦りつけ顔と顔をくっつけ、自然とお互いの唇をすりつけ舐めあい舌と舌とを絡み合わせているうちに、明日香は途方もない快感に襲われ、頭が真っ白になってしまったのだった。
もちろん、それだって催眠術のせいだというのはわかっている。わかってはいるが、快感は快感で――それも、途方もない快感で、自分で慰めてもとても及ばない、体の芯からとろけてしまう深く大きなものなのだ。
明日香は、好き放題に自分の体や心をもてあそばれることを嫌悪しているのだが、その快感にあらがうことがどうしてもできず――結果として、一紗の喜ぶことばかりしてしまっている。忌々しいが、どうすることもできないまま、明日香は一紗のおもちゃにされる日々を過ごしている。
「帰りましょうか」
事が終わると、一紗は何事もなかったように振る舞う。
その表情、態度の端々に、自分のことを『あすかねーたん』『あすねーちゃん』『明日姉』と慕っていた幼い頃の一紗がかいま見えて、明日香は彼を憎みきることもできないのだった。
「さすがに暗くなってきましたね」
「……そうね」
明日香と一紗、男女が並んで歩いていても、奇異の目を向ける者はいない。むしろ向けられるのはあこがれの視線だ。誰もがうらやむ美男美女のカップル。絵になる一対。家柄も見た目も、何から何までぴったりの、高嶺の花すぎる同士の組み合わせ。
みんな、だまされちゃだめ! 明日香はそう言いたい衝動に、もう何ヶ月もさいなまれている。こいつは可愛い顔をして、催眠術を使って人を好き放題にもてあそぶいやらしい人間なのよ!
……でも、そう主張したところで、誰が信じてくれるだろう?
自分でも、経験していなかったら信じないだろう。
神楽一紗は、その気になればどんな女子でも落とせるだろう美少年だ。その彼が、催眠術を使う必要がどこにある? 大抵の人間はそう考える。
だが一紗のおもちゃにされている明日香にはわかる。一紗にとっては、セックスが最終目的ではないのだ。催眠術も、女の子を言いなりにして足を開かせるために使うのではなく、それでしかできない奇抜なことを楽しむために使う。
明日香の体が目当てで、ひたすら両脚の間に入りこみ、夢中になって動いて熱いものを放つ――それだけが目的であってくれたら、どれほど楽であったことか!
……初めてを奪われる前には考えもしなかったことを真剣に考えている自分に、明日香はため息をついた。セックスには年頃なりに興味があったことは事実だけど、まさか、男の子を受け入れるのがただの始まり、入り口にすぎなかったなんて。
「ところで、明日香さん」
「な、何よ!?」
明日香はびくっとし、身構える。これまでの経験上当然の反応。
「影猫って、知ってます?」
「かげねこ?」
聞いたことはあった。クラスの女子が噂していたような。
「あれ、あなたじゃないの?」
暗くなってから出会う。目を見たら戻ってこられない。さらわれるのは女の子だけ。
まさに、明日香の知る、催眠術を使って相手をもてあそぶ一紗の所行そのものだ。
「いや、知らないよ」
「どうだか」
「でも確かに、催眠術的な感じがするね」
「やっぱりあなたでしょ」
「もしそうでも、そうでなくても――きらめく瞳を見たら逆らえなくなって、さらわれてしまうっていうなら、催眠術にかかりやすい明日姉は、危ないね」
「誰のせいだと……!」
「っ!?」
一紗が、変な顔をして沈黙した。
「どうしたの」
「もし僕のせいだったら…………あれは、何だろう?」
「え?」
一紗は、明日香を見ていなかった。
その視線が、廊下の先に向いている。異様な緊迫感がその顔つきに満ちている。
明日香は息をのんで、同じ方を見た。
夕暮れ時、あらゆるものの影が長く伸びていて、普段とまったく違う廊下。
「ほら、見えるよ……見える。猫が、来る」
「……!?」
一紗に断言されると、明日香の目にも、見えてきた。
廊下の彼方から近づいてくる、影――猫の姿をした、長い影。
「ひっ!?」
「あれは、女の子だけをさらう。だから僕には何もできない。僕はここにいない」
言われると、一紗の姿が明日香の意識から消えた。
迫ってくる影の猫と、自分だけが、対峙する。
しかし、どうすればいいのか。
近づいてきた黒い影の中に、ふたつの光がきらめく。瞳だ。明日香はそれを見てしまった。まばゆくきらめく、美しい光。
自分は催眠術にかかりやすい。では、これを見てしまったら……。
「い…………いや…………!」
操られ、さらわれ、戻ってこない。
自分がそうなるのを、明日香は容易に想像できる。だからこそ恐怖にとらわれる。
(いやなら、防ぐ姿勢を取らないと! 猫からの防御姿勢だ、服を脱いで両脚をかかえてお尻とおま○こを相手に見せるんだ!)
恐慌状態に陥っていた明日香には、それが誰の声なのかも、言われていることがおかしいということも、気にすることはできなかった。
大急ぎで、明日香は廊下で制服を脱ぎ、清楚な下着姿をさらす。
両脚をそろえて、腕で強くかかえこみ、むちむちしたふとももを相手に丸見えにした。
「はぁ、はぁ、こ、これで……!」
(そう、その姿勢をとっていれば、相手は――おま○こしか気にしなくなる!)
「ええっ!?」
し、しかし――心を持って行かれ、体全部を失うよりはましではないか?
(ほら、猫が来た……黒い影が、見せつけているおま○こに顔を近づけてきて……)
「ひ……ひっ!?」
明日香は獣の体温を感じた。股間に迫る湿った鼻先を感じた。
そうなるともう、この姿勢がおかしいとか何とか、それどころではなくなってしまう。
明日香の息は詰まり、全身が恐怖にこわばった。
(連れ去られた女の子が戻ってこない理由――あなたには、わかっているはずだよ)
「理由……?」
(とっても気持ちいいからだね。信じられないほどに、いい。経験したことがない快感をくれる。だから逆らえないし、だから戻ってこないんだ……だから)
ぞわっ、と明日香の全身に鳥肌が立った。
怖気ではなく――快感の。
そう……途切れた言葉の先が、明日香にはわかっていた。
『だから……あなたも、気持ちよくなる……』だ。
「あ……!?」
(ほら、猫が、あなたに入りこんでくる……影だから、下着の中にも、平気で……そしてそれは、とても気持ちいい……人間ではできないありえない快感が来るよ……ほらっ!)
「ふああああっ!?」
息か、舌か、あるいは肉球ででも触れられたのか、明日香の股間に未経験の熱い感覚が広がった。
腰が溶けた。一紗の指で、ペニスで、あるいは唇や舌でいじられる、そのどれとも違っていた。未知の刺激、未知の快感。
(すごく嬉しくなってしまう。いけないのに。だめだと思えば思うほど、気持ちよくなる)
「はああ、ああ、ああああっ!」
明日香の口からはもう、快美の悲鳴しか出ない。
「初めてっ、こんなの、初めてぇぇ!」
瞬時に理性は崩壊し、明日香は快楽に溺れた。
『初めて』ということの、なんという甘美な魅惑。一紗には毎日のようにもてあそばれ、そのペニスも指も知り尽くした。しかしこれは未経験だ、何がどうなるかわからない、どれほど気持ちよくなるかわからない。
人間ではない相手が、ついに明日香の中に入りこんでくる。
背徳感、危機感、その裏返しの興奮、好奇心、期待――快感!
「あお、おぉ、おおおお……!」
半ば白目をむいて、明日香はよがり狂った。
両脚をかかえこむ腕には異様な力がこもり、股間は興奮にふくらんでこれ以上なく明確な縦スジを浮き上がらせる。
そこが強くひくつき、熱いしぶきがはじけ飛ぶ。
(そう、猫が、あなたの中を往復する!)
面妖きわまりないそのイメージが、逆に、明日香には激烈に作用した。
明日香の知らない世界の入り口がそこに開いている。初めての経験。未知の経験。未知の世界、茶道の家の娘である明日香には許されない、日常から離れた、逸脱の道。
「はあああっ!」
こみあげるままに明日香は叫び、新しい汁をまき散らした。
猫に犯される、猫が入りこんでくる、猫にされる、猫に支配される、影猫に自分のすべてを持っていかれてしまう!
「うあっ、あっ……あああああっ!」
――大量の、本来なら便器に対して放つべき不浄汁を、廊下に大量にまき散らして、明日香は最高の感覚に達し……。
そのまま、何もわからなくなった。
「明日香さん、どうしたの?」
「え…………あ、いえ…………」
明日香は目をしばたたいた。何も変なことは起きていない。一紗にもてあそばれた後、二人で下校してきて、今は校舎の外、普段使う駅へと歩いている途中。
「あ…………ほら、あれ」
一紗がうながす方を、明日香は見た。
子猫が、人慣れしている風に、間近で首をあげて、自分たちを見つめている。
「可愛いわね…………おいでおいで」
手招きしながら、明日香の目がうつろになり――。
「…………おいで…………」
しゃがみこんだ両脚が、限界まで大きく開かれた……。