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「ん……」
「んんっ……」
唇と唇が重なり、海里美乃莉は喉でうめいた。
快美感が全身を浸し、舌が触れあうたびに背筋に電流が走る。
唾液を交換しながら舌を絡め、ねっとり濡れた唇同士を離した時には、制服の下の乳首はじんじん、股間もぬめりを帯びているのがはっきりわかるほどに熱くうずいている。
「はぁん……」
「バイトだろ? 行ってらっしゃい」
「ああん……もう、意地悪……」
神楽一紗にそう言うが、彼女としてもバイト代は貴重な遊びの費用、おろそかにするわけにはいかない。
やむなく、放課後の貴重なひとときを使った熱い交わりを切り上げて、美乃莉は下校していった。
「まったく……一紗は、もうちょっと優しくしてくれてもいいのになー」
夕暮れの廊下を急ぎ足で歩きながら、美乃莉は唇をとがらせた。
プリンスの称号をほしいままにする美少年、神楽一紗と美乃莉は、目下のところ、恋人同士と言っていい関係にある。
美乃莉としては、一紗とのつきあいについては、もちろんまったく文句なし。よくぞライバルを蹴落として一紗の彼女の座をつかみとれたと、自分で自分を賞賛している。このままもっと深い関係になって、できることなら将来の話もしたいところ。
そのためにも、体は早々に許したし、おまんこどころか、どんな場所でのどんなプレイでも受け入れてきたのだが――それでまた美乃莉自身も、尋常ではない気持ち良さをたびたび味わい、前よりさらに一紗に夢中なのだが……。
だからこその不満、というものがある。
「もっと、積極的にさあ……家に誘ってくれたり、ご家族に紹介とか、お友達でもいいんだけど……」
神楽一紗は、日本舞踊の天才であり、舞踊一筋に生きてきた純粋培養の御曹司であり――したがって、『彼女』というものの扱いが根本的にわかっていないところがある。
なので、これまでは美乃莉の方から積極的に話しかけ、具体的に要求しあるいは指示を出して行動させてきたのだが……。
一紗は確かに、世間を知らない彼氏として、美乃莉の言うとおりにデートでも買い物でもあるいはホテルでさえ、何でもしてくれるしお金も自分から払ってくれるのだけれど。
そこに、一紗自身の主体的な意志が感じられない。
美乃莉に言われたからそうしている、という感じしかしない。
それではいけない。美乃莉が望むのはそういうものではない。
一紗自身の意志で、美乃莉のために何かしたいと思い、行動してくれるようでないと、これから先がとてつもなく不安なのだ。
「う~~ん……」
一紗をもっと自分に引きつけなければならない。
しかしもう、セックスを許しているし、プレゼントとかそういうものでは海里家よりはるかに金持ちである一紗の心を動かすなんてことは無理なのは目に見えているし。
ではどうするか。
美乃莉は考え悩みながら、バイトに赴くべく廊下を急いだ。
と、そこへ。
「えっ…………!?」
廊下に長く伸びる影のひとつが、すいっと、身をもたげた。
命あるもののように。
そしてそれが、美乃莉に向かってきた。
「……猫!?」
そう見えた。
美乃莉は立ちすくみ――急激に、その心臓が拍動を強めていった。
『影猫』。女子の口にのぼる、それは噂だった。
闇から現れ、一人でいる女の子をさらっていってしまうという。
噂を広めるのに、美乃莉も一役かっていた。
どうせこわがりの誰かが影を誤認したのだろうと推測しつつも、おおげさに話のネタにし、怖がってみせた。思春期の女子はそういう話が好きなものだ。案の定その噂は口から口へ、すごい勢いで広がって、今ではもう女子で知らぬものはない、学園七不思議とか何とか言われるそのたぐいにまで成長している。
美乃莉は周囲に話を合わせるために、自分も心から信じているふりはしていた。内心では自分がまいた噂の広がり具合を楽しみ、かつそれを信じて怖がる連中を面白がって。
でも……これは。
誤認だったはずだ。根拠のない、噂。
そうだろう、常識で考えて、校舎内に人をさらうような大型獣が入りこむわけがない。
だけど、じゃあこれは何だ。自分の目の前にいる、この大きくて暗くて不気味な存在は。
その『猫』の、瞳が光った。
「あ……」
美乃莉はそれをまともに見てしまった。
深い色をしてきらきら光る、宝石そのものとしか思えない瞳。見ているうちにも色がどんどん変わってゆく。サファイアの青からエメラルドの緑へ、トパーズの黄色へ、ルビーの赤からダイヤモンドの純白の輝きへ。
こいつは何なのとか、逃げなきゃとか、助けを、声をと思う気持ちが、その光の変化を見ているうちに、消えていった。全身がふわっとなり、頭がぼうっとなり、まともにものを考えることができなくなる。美乃莉はこの感覚をよく知っていた。とても気持ちのいいものだった。どこで経験したのか思い出せないが、なぜか神楽一紗の顔が浮かんだ。顔が浮かぶとさらに意識に靄がかかり、美乃莉の表情が弛緩し、その目から意志の光が消えた。
『猫』が、体をくねらせた。
美乃莉の手が勝手に動き出した。いやそう動いているのはわかっていた。わかっていたが、止めようという気持ちがまったく起こらない。手が動くのは当たり前。その結果も当然のこと。
スカートが、両脚を滑り落ちた。
手はさらに動いて、ショーツも脱ぎ下ろした。美乃莉は前かがみになって足を抜くと、元通りの姿勢に戻って立った。
ニーソックスをはいたままの、裸の下半身。両脚の間に縦の割れ目が丸見えになる。自分がそうなっていることに対して、美乃莉は何も反応しない。これは当然のこと。廊下で服を脱ぎ、おま○こを丸出しにすることに何の不思議もない。美乃莉はむしろ爽快感すらおぼえていた。
猫が身をひるがえし、美乃莉を促した。
美乃莉はそのメッセージを理解して、足を動かし始めた。美乃莉の頭の中から、バイトのことも一紗のことも、自分自身すら消えていた。自分はもうこの猫のものなのだった。
小さくまるいお尻を揺らしつつ、うつろな目をした美乃莉は無表情に廊下を歩いていって、夕影の中に消えた。
後には、輪になっているスカートと、脱ぎ捨てられたショーツだけが残された。
翌日、駅前の喫茶店『アプリコッコ』店内の、従業員用バックスペースに、甲高い声が響き渡った。
「っごめんっっっなさぁぁぁぁぁいっっっ!!!」
可能な限り最大級のお詫びのポーズを、美乃莉はとった。
土下座まではいかないまでも、頭が両膝につくほど深々としたお詫びのお辞儀。全身全霊で許しを乞う姿勢だ。
「まったく」
シフトリーダーの科野しずくに見下ろされ、美乃莉は今一度頭を下げた。
「バイトの日を間違えた? あんたどんだけここで働いてんの。それで無断でバックレて、シフトのない今日、のこのこ顔出す? どーゆー神経してんだか」
「すみませんでしたっ! なぜか日付を勘違い! 昨日と今日を逆に思ってました!」
「もういいよ。とりあえず、お詫びは受け取ったからさ」
しずくはニヤリと、美乃莉の斜め後方に目を向けた。
アプリコッコの、女子店員の制服を身につけた、神楽一紗がそこにいる。
本来男子だが、女子と見まがうばかり、いや下手な女子など遠く及ばない、異装ゆえの妖しい魅力にあふれていた。本人もその気で、女形(おやま)修業で身につけた『しな』を目元に宿し、たたずんでいる姿を見ているだけでしずくの胸のうちがざわついてくる。
バイトをサボってしまった美乃莉が泣きついて、連れてきて、着替えさせたのである。
「ごめんね、一紗、こんなことさせて」
「いいんだよ。楽しいよ、これ。こういうの、したことないからさ」
一紗は笑顔で言って、スカートの裾を軽くつまみあげた。
のぞく脚もまた、なまじな女子よりつややかで、白い。
一紗が働き始めると、たちまち店内に異様な空気が立ちこめた。
彼の妖しい魅力にとらわれた女性たちがテーブルから立とうとしなくなり、店内は満員になり、席についている客が友人に携帯で連絡して、さらに客が増えてゆく。
大混雑の中を、一紗は優雅に、美乃莉は必死に動き回って、店員としての仕事を果たしていった。
「終わった~~~!」
「ふう、さすがに疲れたね」
すっかり夜になった街路を、二人で帰る。
「すごいよ一紗、やっぱり、きれいで格好よくて色っぽくて、最高!」
「ありがとう」
一紗は自然に美乃莉の腰に手を回した。
「あん……」
「でも、こんなの初めてだね。どうしちゃったの?」
「それが、自分でもよくわかんないんだよね。昨日、帰るとこまではおぼえてるんだけど、その後…………」
美乃莉の瞳が、不意に焦点を失いさまよった。
その心の中に異様な変化が起きていた。
美乃莉は『思い出した』。
自分が、影猫に遭遇し、操られたことを。
違う、自分こそが影猫で、美乃莉に化けているのだということを!
化けている、つまり本人ではないのだから、どんなことでもできる。
何も知らずに隣を歩く、この美しい獲物を食らうことも、一切のためらいなく!
「……ねえ、一紗」
音程の下がった、粘っこい声で美乃莉は言った。
「帰る前に、ちょっと……休んでいかない?」
「え……いいの?」
「うちなら、大丈夫だから……」
美乃莉、この人間のメスの母親なら、問題ない。うるさいようなら、化けたりせずに食ってしまえばいいのだから。
美乃莉は返事を待たずに一紗の手を握り、指をからめてつかむと、引っ張って――ホテルへ入っていった。
その瞳が、周囲の明かりを反射してきらりと光った。
ホテルに入るなり、美乃莉の全身が甘くとろけるようになった。
男を誘うフェロモンが濃厚に分泌され、目つきも口元も、すべてが淫猥に変わる。
「さあ……見て……」
美乃莉は、先ほどの一紗に負けぬ優美な動作で服を脱ぎ、下着姿を一紗の前にさらした。
一紗が見入り、喉を鳴らす。
自分に誘惑されていることに、美乃莉はぞくぞく身震いした。
「おいで、坊や……」
かすれた声で招く。化猫の身からすれば、一紗などほんの若僧だ。人よりはるかに長く生きて身につけた知恵と妖美さをつくして、美乃莉は一紗を誘惑した。
この誘いに抗えるオスなどいようはずはなかった。
美乃莉はさらに、目に力をこめた。女子を操り支配する力は、男にだって当然通用する。
美乃莉の目を見た一紗が、うつろな顔つきになる。これでもう、この美少年は自分のものだ。自分を抱くことしか頭になくなる、肉欲の権化と変わる。その陽根を自分の陰部に誘いこみ、精気を徹底的に吸い上げて、この美しい命を食らうのだ。それを思うだけで下着の内側が熱く濡れた。
「早く…………ね?」
美乃莉は、下着を一紗の手で脱がせた。かしずかれるのも喜びだ。
そして、開いた両脚の間に、一紗が入ってくる。
これからこのうつろな顔が、快感に歪む。ありえない快感を味わい、喜びから忘我の顔つきになり、それを超えて体力の限界を迎える苦痛に引きつり、そしてそれすらも超えて全てをなくした恍惚の世界へと入っていくのだ。そのプロセスを想像すると美乃莉の女陰はさらに淫らによだれを垂らした。
一紗のモノが入り口にあてがわれた。亀頭を張り詰めさせた、いい形の男根だ。こんなに硬く勃起した状態を見るのはこれで最後。抜け出る時には、精のすべてを吸い尽くされ、もう二度と出すことができない状態になっているはずだ。
「ごくっ……早く……来なさい……挿れるのじゃ、これを、はよう、はよ……」
不慣れなのかペニスはなかなか侵入して来ず、美乃莉は化け猫本来の古風な口調を出してしまっていた。
「ん…………」
美乃莉の焦れに恐れをなしたように、ようやく、ペニスが入ってきた。
幸せを美乃莉は感じた。これから、愉悦の時が――。
「ふああああああああっ!?」
その口から、悲鳴が噴き出た。
強烈な快感が、美乃莉を襲っていた。
おかしい、これはおかしい、こんなはずは!
人外の快感を味わい、たちどころに達し、気をやり、達し続けて意識を漂白され、魂を溶かし、すべて吸い尽くされるのは、一紗の方のはず。
なのに自分が感じている、尋常ではなく、強く、甘く、甘すぎるほどに甘く、致命的な快感を。
「おああああ! ああああ! あひゃああああ!」
ペニスが動き出す。そのたびに絶叫が漏れ出る。甘美すぎて、叫ばずにはいられない。擦られて悦ばずにはいられない。
「あひぃ! ひぃ! はひぃ! ひぁぁぁ!」
股間から汁が噴き出る。激しく痙攣する。衝撃的な快楽が何度も何度も背筋から脳天へと突き抜ける。
こんなはずは。自分は人より優れた存在。人を食らう立場。なのになぜ。こんなのはありえない。そう思えば思うほど、反動も強くなる。確固たる自分が崩壊して、何もなくなる、一生で一度しか味わえない破滅的な快感が襲う。
美乃莉は泣き叫び、身悶え、よがり狂った。
「うあああ! あ゛あ゛あ゛! あ゛ー! あ゛ー!」
しまいには、赤ん坊か、あるいは猫のような声しか出なくなった。
その中をさらに一紗が動き、擦り、突きまくって……。
「う、うっ!」
「ひゃはあああああああああああああああ!」
一紗の脈動を感じた瞬間、美乃莉の意識は完全に吹っ飛んだ。
自分が猫か人間かもわからなくなり、あらゆる穴から汁を垂れ流すだけの、ぐしょ濡れの肉塊と化す。
「いぐ! いぐ! いぎ! ぎひゃあ!」
その中を、脈打つペニスが、とどめとばかりに刺激してくる。
「ぎゃはああっ!」
唾を飛ばし舌を突き出し、美乃莉は最大の絶頂をおぼえた。
そのまま、まったく何も考えられない、完全に精神を漂白された状態に入りこんでいった……。
「……これから10分経つと、だんだん、君は元の人間に戻ってくるよ……もう猫はいなくなって、本来の君に戻る……」
全ての穴を開ききった状態で失神した美乃莉の中から、一紗はペニスを抜き出した。
それにかぶせてあったコンドームを取り外す。
相当量の精液が、中には満ちていた。
「よかったよ、美乃莉。たまにはこういうのもいいだろう?」
目は開いているものの何も見えていないし、よだれや鼻水までも垂れ流している、ひどい顔の頬を、一紗は愛おしげになでる。
「君は僕の、素敵な彼女だよ。これからもこうやって、沢山遊ぼうね、美乃莉」